私はまだきみについて詳しく知らない
私が ”彼” について知りたいと思ったのは、2014年の冬だった。
その年の秋、私の好きなスピッツが、「テレビ朝日ドリームフェスティバル」に出演した。私はそのチケットを押さえ、当日、自分の最寄り駅のコンビニで受け取った。
ところが。
ひとりで行くつもりが、何らかの手違いで、私は2枚購入してしまっていた。知人に当たったものの、すぐには見つからず。Twitterで譲り先を探し、なんとか同行者を見つけた。
その女性は、スピッツが好きだという話だったが、よくよく聞くと、その日出演予定だった、渋谷すばるの、そして、関ジャニ∞のファンだという。
私自身もV6の、その時点で19年間のファンだったため、「関ジャニですか〜!曲知らないけど興味あります〜!」と話し、じゃあ次のツアーのチケットが余ったら連絡してあげる、と言っていただいた。
渋谷すばるを見たのはその日が初めてだった。すごく身体の線が細くて、でも声は力強かった。攻撃的な歌い方。めちゃくちゃ上手かった。
それから数ヶ月後。
忘れていた頃に、その女性から連絡があった。「関ジャニ∞のコンサートがあり、チケットを譲るがどうするか」という。その頃には、正直、テンションは下がっていた。そもそもV6ファンだが、”ジャニーズファン” ではなかったため、知っている曲は2〜3曲。しかも運悪く友人を捕まえられず。ひとりで行くしかない。ひとりで、知らん曲ばかりで楽しめるのか?と思いつつ、折角誘ってくれたのだから行かねば悪い、ということで、無理やり、気持ちを奮い立たせて、チケットの譲りを依頼した。
ひとつだけ、運が良かったことがある。同じ部署のパートの女性(20歳くらい年上)の娘がファンだったため、事前にその時のツアーのアルバムを借りることができたのだ。ありがたくiPodに入れたが、気が向かないことには変わりなく。再生されたのは当日、会場に向かいながら1周しただけだった。
さて、会場は東京ドーム、席は2階後方。残念ながらメンバーの名前も半分しかわからない。ライブが始まっても、どうにも乗り切れずにいた。
しかし、長年の(?)Vヲタの経験から、私はあることに気付いた。
「担当を決めないと、全然楽しめないぞ…!!」
そこで、ライブ中盤になってやっと、担当を決めることにした。7人中、名前と顔が一致する人は4人(ひとりは名前すら知らなかった)。その中で気になる人…気になる人は…。
その時、急に思い出した。
昔「ザ・クイズショウ」にハマっていたこと。
横山さんが、ザ・クイズショウに出演していたこと。
その演技を見て「この人こんな役もできるのか」と思ったこと――。
と、いうわけで、私の急ごしらえの ”担当” は、横山裕という人に決まった。
そしたら、きっと心の奥底にしまい込んでフタをしていた「好き」の感情が溢れて止まらなくなった…。
*****
そんなこんなで、そのまま横山担になって、早3年ほどが経つ。気づけばファンクラブに入り、数回、コンサートにも参加した。
それでも、自分はまだ「ド新規」だという思いが抜けない(事実としてまだ新規なのだけど)。
一体なぜか?
それは、横山さんの "変化" にあると思う。
横山さんは不思議な人だ。
昔の映像を見ると「俺が俺が」という感じで前へ出て、発言する。ヤンチャな関西の男の子。怖いものなんてないように感じる。
でも私が知った頃の横山さんは、なんというか、感情を押し殺して(?)、あるいはちょっと俯瞰したような顔をして、アツくもならない、ふざけない、みんなの悪ふざけの輪に入らない、良く言えば大人、悪く言えばノリが悪い、という時期だったと思う。
私は、横山さんの変化を知らない。トランペットを初めて披露した日の、ファンたちの熱狂も知らない。ぽっちゃりしていた頃もよく知らない。
7人のメンバーが内包した物語さえも、よく知らない。
だから、横山さんのことを何も知らないような気持ちになる。
他の人と比べるのは良くないが、私はこれまで、V6の三宅、岡田両氏を応援してきた。
俳優として一定の評価を得ているオカダ。世間での知名度も抜群。男性からも「格好いい」と評されることが多い。デビュー直後はたくさん苦労したという話を聞くが、今やダンスは難なくこなしているように見えるし、去年のコンサートではグイグイとMCに食い込んでみんなに可愛がられていた。
少女マンガから飛び出してきたかのような健くん。いつまで経っても老けない外見。声や仕草はザ・アイドル。ファンのことを一番に考え、ラジオでは独特のお喋りが人気。市民講座に通って手話を会得したり、一般の人に混じって先生のダンス教室を受けたり。飛び込み力、懐に入る力はスゴイ。
2人は、憧れの存在、「こうなりたい」と思う存在だ。
横山さんだってスゴイ。努力一本でトランペットを習得した。ダンスも覚えるのが遅いから、皆より先に来て、最後まで残る。高卒認定だって取った。ドヤ顔が可愛い。弟思いで、結婚式では号泣しちゃう。最年長なのにイジられキャラ。
多分愚痴とか思ったこととか表に出せない、相手に直接言えないタイプで、それはきっと育ってきた環境に理由があると思う(とはいえ性格傾向であって、良し悪しではないだろうけど)。
なんだか不器用な横山さん。横山さんは、応援したくなる人だ。
グループとして乗りに乗っているこの時期に、メンバーと同じレールの上を歩くには心もとなすぎるのに、それを飄々とやってのける人。
何も知らない横山さんを、ちょっとノリが悪くて不器用で、一生懸命すぎて音楽番組ではカメラに抜かれてもあさっての方向を見て真剣な顔をしてばかりの横山さんを、メンバーと一緒のポーズをしないのではなく、ポーズをしないであろうゲストを気遣っている横山さんを、自分から面白いことが言えない横山さんを、でもメンバーを俯瞰していて的確に人の発言を拾える横山さんを、これからもっと応援していきたい。
今週のお題「私のアイドル」